2013/11/11

映画「過去のない男」、「トンネル」



秋の夜長を楽しもうと借りた、フィンランド映画「過去のない男」
アキ・カウリスマキ監督作品で、日本でも2003年に公開されたようです。
もともとは制作にドイツが関わっているということで何気なく借りたのですが、
これは久々のヒット!!!

タイトル通り、ヘルシンキに来たとたん暴漢に襲われ記憶をなくした中年男が主人公。
名前も思い出せない中、周りの助けを借りながら住居を調え(コンテナの中に)、
仕事にもありつき(まずは慈善団体に)、なんと彼女もゲット!
順風満帆に見えた矢先、彼の出自が明らかになります。
一旦は妻のもとに戻ったものの。。。というストーリー。

なんといっても見所は、小津安二郎の映画を彷彿とさせる「淡々」とした世界観。
カメラワークも正面と横からの引きしかないような、
わかりやすい「臨場感」や「躍動感」とは無縁な演出。
登場人物も、なぜかあまり瞬きをしない、感情を表さない、え?ほんとに役者なの?
と勘違いしてしまいそうな不思議な立ち居振る舞い。

でも、それがなぜかじんわりくる。

2002年のカンヌ映画祭グランプリにも輝いたこの作品、amazonには
フィンランドでの劇場公開時のパンフレット画像が載っていますが、
すごく雰囲気のあるかわいいデザインです。
劇中の音楽もなんともいえずノスタルジックで、そんなところも秋にぴったりの
オススメ映画です。

そしてもう一つ感銘を受けたのが、
ドイツのベルリンの壁にまつわる映画「トンネル」




第二次世界大戦後東西に分断されたドイツですが、
東から西への人材流出は深刻なものとなり、
1961年、ついには壁が建設されてしまいます。
その直後なんとか西ドイツへ逃亡した主人公の元水泳選手ハリー・メルヒャーは、
同じく自身は逃げ果せたものの、大事な家族や友人を東に残した仲間数人と、
西から東へ150メートルに及ぶトンネルを掘るという、東からの脱出計画を実行します。

これが実話だというのがすごい。
映画を見ると、東西ベルリンは本当に鉄条網の張り巡らされた壁一枚で隔てられていて、
東側の警備はあついものの、相手側の状況は肉眼でしっかり確認できるほどの近距離です。
しかしこれほど近いにも関わらず、東西は確実に分断されているという現実。
また、東ドイツ市民同士が自らの友人や家族を監視し、シュタージ(東ドイツの諜報機関)へと密告する場面もしばしば登場し、当時の緊迫した状況がよく描かれています。

DVDのパッケージを見る限り、この女性が主人公の物悲しいお話に思えますが、
実際は反ソの意志を強く持つ、心身ともに強靭なハリー・メルヒャーが主人公であり、
幾多の困難を乗り越え、着実に計画を実行に移していきます。悲しんでいるだけではない確かな行動力で、167分という長丁場ではあるものの、特に後半ぐいぐい話を引っ張り、ドキドキはらはらしっぱなしの展開は圧巻!

実はあまり期待していなかったんですが、歴史を学べる教材として、そしてエンターテイメントとしてもかなりおもしろい映画でした。原題が"Der Tunnel"なので邦題も「トンネル」なんでしょうが、もう少し躍動感溢れるタイトルと、トンネル脱出計画の行動力が見えるDVDパッケージのほうが内容に合うような。。。と個人的には思ってしまいます。ちょっと見せ方で損をしているかも?
。。。とにもかくにも、オススメ映画です。








0 件のコメント:

コメントを投稿